💰 家計管理

子どもが生まれたら家計はどう変わる?
育休中の収支シミュレーション

「育休に入ったら収入が減る」——漠然とした不安は多いのに、実際いくら入っていつ振り込まれるのかを知っている人は意外と少ないものです。私自身、2回の産休・育休と時短勤務を経験しました。もらえるお金を時系列で整理し、具体的な金額でシミュレーションしたうえで、経験者だからこそ伝えたい「3つの落とし穴」までお話しします。

🌿 先に安心材料をひとつ。育休中の収入は、思っているほど減りません。「67%しかもらえない」という数字だけが独り歩きしていますが、実際の手取りで比べると約8割、条件によっては10割相当になります。ただし——お金が入ってくるタイミングには要注意です。ここを知らずに育休に入ると、貯金がある家庭でもヒヤッとします。

まず、もらえるお金を時系列で整理する

産休・育休でもらえるお金は1種類ではなく、時期によって支給元も名前も変わります。ここが分かりにくさの原因なので、まず全体像を押さえましょう。

時期もらえるお金金額の目安どこから
出産したとき出産育児一時金原則50万円健康保険
産前42日〜産後56日出産手当金給与の約2/3健康保険
産後57日〜(育休開始)育児休業給付金給与の67%雇用保険
上記のうち最大28日間出生後休業支援給付金
※父母ともに育休を取得した場合
+13%雇用保険
育休開始から181日目〜育児休業給付金給与の50%雇用保険
復職後(子が2歳未満)育児時短就業給付金
※時短で賃金が下がった場合
時短中の賃金の10%雇用保険
💡 2025年4月から、実質「手取り10割」の制度が始まりました。
子の出生後8週間以内に父母ともに育休を取ると、最大28日間は給付率が67%+13%=80%になります(出生後休業支援給付金)。さらに育休中は社会保険料が免除され、給付金には税金もかからないため、働いていたときの手取りとほぼ同額になる計算です。パパが育休を取るかどうかで、家計の受け取り額が変わる時代になりました。

実際にシミュレーションしてみる

言葉だけでは実感がわかないので、具体的な数字で見てみましょう。額面の月給30万円(手取り約24万円)の方が、産休・育休を取得したケースです。

時期入ってくるお金働いていたときの手取りと比べて
産休中(約3.2ヶ月)約20万円/月約8割
育休 最初の28日
※父母ともに取得した場合
約24万円/月ほぼ10割
育休 〜180日目約20万円/月約8割
育休 181日目〜約15万円/月約6割

額面では「67%」でも、手取りで比べると約8割になるのがポイントです。理由は2つあります。給付金には所得税・住民税がかからないこと、そして育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されることです。免除されても年金の記録は納めたものとして扱われるので、将来の年金額が減る心配もありません。

⚠️ 給付金には上限があります。給与が高い方ほど「67%」より割合が下がります。育児休業給付金の上限は、67%の時期で月およそ32万円、50%の時期で月およそ24万円です(上限額は毎年8月に見直されます)。月給がおおむね48万円を超える方は、この上限に当たると考えておいてください。

経験者が伝えたい、3つの落とし穴

ここからが本題です。金額の話はネット上にあふれていますが、実際に育休を経験しないと分からない、家計が苦しくなるポイントが3つあります。私が2回の育休で実際にヒヤッとしたところです。

落とし穴①:最初の振り込みまで2〜3ヶ月かかる

これが最大の落とし穴です。育児休業給付金は2ヶ月ごとの後払いで、しかも申請手続きは育休に入ってから行われます。そのため、最初の入金は育休開始から2〜3ヶ月後になるのが普通です。

つまり、給料が止まってから最初の給付金が振り込まれるまで、3ヶ月近く収入ゼロの期間ができるということ。出産準備でお金を使った直後にこれが来るので、知らないと本当に焦ります。生活費の3ヶ月分は、必ず手をつけられる形(普通預金)で残しておいてください。投資に回していると、いざというとき値下がり中でも取り崩すことになります。

落とし穴②:半年後に給付が「67%→50%」に下がる

育休開始から181日目、ちょうど生活のリズムが整ってきた頃に、給付率が67%から50%に下がります。手取りベースでは約8割から約6割へ。先ほどのシミュレーションだと、月20万円だった収入が15万円になる計算です。

やっかいなのは、この時期は赤ちゃんの成長に合わせて支出がむしろ増えていくことです。離乳食が始まり、服のサイズが次々変わり、おでかけも増えます。収入が下がるタイミングと支出が増えるタイミングが重なるので、「半年後に月5万円減る」と最初からカレンダーに書いておくくらいの心構えがちょうどいいです。

落とし穴③:住民税だけは免除されない

育休中は社会保険料が免除されますが、住民税は免除されません。しかも住民税は「前年の所得」に対してかかるので、バリバリ働いていた前年分の税額が、収入が減っている育休中に請求されます。

さらに、給与天引き(特別徴収)ができなくなるため、自宅に納付書が届いて自分で払う形(普通徴収)に切り替わり、年4回のまとめ払いになることが多いです。1回あたり数万円がドンと出ていくので、これを想定していないと家計が一気に苦しくなります。育休に入る前に、勤務先に「住民税はどう払うことになりますか」と確認しておきましょう。

支出はどう変わる?増えるもの・減るもの

収入の話ばかりしてきましたが、支出も大きく変わります。意外に思われるかもしれませんが、トータルの支出は思ったほど増えません。増えるものと減るものの両方があるからです。

増えるもの減るもの
おむつ・ミルク(月1〜2万円)
子どもの衣類(サイズが次々変わる)
ベビー用品・チャイルドシート等の初期費用
水道光熱費(在宅時間が増える)
タクシー・宅配などの時短出費
自分の被服費・美容院代
飲み会・交際費
ランチ代・通勤にかかるお金
旅行・レジャー費
(子どもの医療費は自治体の助成でほぼ無料)

私の場合、育休中は外食と交際費がほぼゼロになったので、おむつ代などが増えても支出の総額は大きく変わりませんでした。むしろ、家にいる時間が長くなって「何にお金を使っているか」に向き合えたことで、固定費の見直しが進んだくらいです。

🌰 私は2007年に結婚して、貯金ゼロからのスタートでした。その後2回の産休・育休と時短勤務を経験しています。収入が減る時期を2度くぐって分かったのは、収入が減ること自体は、実はそれほど怖くないということです。怖いのは「いくら入って、いつ入るのかを知らないまま突入すること」。

私は育休中も家計の仕組み(先取り貯蓄と月1回の振り返り)だけは止めませんでした。金額は減らしましたが、続けたことで復職後にすぐ元のペースに戻せました。時短勤務で収入が少ない時期も、この仕組みのおかげで年250万円ペースの貯蓄を維持できています。

いちばん伝えたいこと:給付金は「ないもの」として家計を作る

ここまで給付金の話をしておいて最後にこれを言うのは矛盾に聞こえるかもしれません。でも、この記事でいちばん伝えたいのはここです。

給付金はもらえます。でも、もらえないものとして生活の基盤を作っておいてください。

目指してほしいのは、給付金がなくてもやっていける家計です。そのうえで振り込まれた給付金には、できれば手をつけない。そのまま貯蓄に回してしまう。そうすると、収入が減る時期を「貯蓄が止まる期間」ではなく「淡々と積み上がる期間」に変えられます。

もちろん、共働きの収入を前提に暮らしを組み立ててきた家庭が、いきなりこれをやるのは簡単ではありません。その場合でも、給付金を生活費に溶かしてしまうのではなく、「少しゆとり費として使わせてもらう」くらいのバランスにしてほしいと思っています。全部使うのではなく、一部は残す。それだけで復職後のスタートがまったく違います。

💡 これから結婚する方・子どもを考えている方へ
もし今、子どもを持つことを意識しているなら、ぜひ一度「片方のお給料だけで暮らせるか」をシミュレーションしてみてください。ふたりの収入があるうちに、片方の手取りで生活費が収まる形を作っておく。これができていれば、産休・育休はもちろん、転職や病気で収入が減ったときにも家計は揺らぎません。
やり方は簡単です。家計簿で把握した生活費の合計を、収入が高いほうの手取りと比べるだけ。オーバーしていたら、その差額が「これから調整していく余地」です。
※ 我が家も実は収まりませんでした。無理せず続けるための工夫は 「片方の給料で暮らせる家計」を新婚のうちに作る で詳しく書いています。

私がこの考え方を大事にしているのは、自分の子どもにいつか伝えたいことだからでもあります。制度は変わります。今は手厚い給付も、20年後にどうなっているかは誰にも分かりません。制度に守ってもらう前提ではなく、制度がなくても立てる家計を作っておく。そのうえで受け取れるものは、ありがたく将来のために積み上げる。この順番であれば、いつの時代でも通用します。

育休前に、これだけはやっておく

  1. 片方の手取りで生活費が収まるか試算する——ここが土台です。オーバーしている分が、これから調整していく余地になります。
  2. 生活費3ヶ月分を普通預金に確保する——最初の給付金が入るまでのつなぎ資金です。ここだけは投資に回さないこと。
  3. 住民税の払い方を勤務先に確認する——納付書が届く場合、いつ・いくら必要かを聞いておきます。
  4. 固定費を1つでも見直しておく——通信費・保険・サブスクなど。収入が減る前に下げておくと、育休中ずっと効果が続きます。
  5. パパの育休取得を検討する——出生後8週間以内に父母ともに取得すれば、最大28日間は手取り10割相当。取らない理由がないくらい大きい制度です。
  6. ボーナスがどうなるか確認する——査定期間に休業が含まれると減額されることが多く、年収ベースでは給付金より影響が大きい場合があります。

まとめ

数字が見えれば、不安は「準備すべきこと」に変わります。まずは片方の手取りで生活費が収まるかを確かめて、3ヶ月分の生活費を現金で確保するところから始めてみてください。

わが家の場合はどうなる?

収入が変わる時期を含めた将来のお金の流れは、無料の診断ツールで確認できます。家計の整え方は、家計簿ガイドにまとめました。

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※ 本記事の制度内容は2026年8月時点のものです。給付金の上限額は毎年8月に見直されます。金額はモデルケースに基づく概算であり、実際の支給額は加入状況・賃金・勤務先の規定によって異なります。正確な金額はお勤め先またはハローワークにご確認ください。