なぜ「片方の給料で暮らす」設計が役に立つのか
共働きで暮らしていると、ふたり分の収入があるのが当たり前になります。でも長い人生では、どちらかの収入が減る場面が必ず来ます。産休・育休、転職、病気やケガ、家族の介護。どれも他人事ではありません。
そのときに、ふたり分の収入を前提に生活を組んでいると身動きが取れなくなります。逆に片方の収入で生活が回る形になっていれば、収入が半分になっても慌てずに済みます。
そしてもうひとつ。片方の給料で暮らせるということは、もう一人分の給料がまるごと余るということです。それがそのまま貯蓄になります。年間250万円といったペースの貯蓄は、特別な節約術ではなく、この構造から生まれます。
私が結婚した当時、周りにもこう考える人は多く、「そうするべき」という意見をよく耳にしました。今でもファイナンシャルプランナーが薦める考え方として紹介されているので、時代が変わっても有効な設計だと思います。
正直に書きます。我が家は収まりませんでした
結婚当初、私もこの考え方で家計の予算を組みました。ところが——片方の給料だけでは、どうやっても収まらなかったのです。
理由ははっきりしていました。子どもがいない時期は遊びの機会も多く、夫にも私にもある程度のおこづかいが必要でした。そこを削れば計算上は収まります。でも、それをやると生活が窮屈になって続きません。
ここで「じゃあ無理だ」と諦めるか、「収まらない前提でどう設計するか」を考えるか。私は後者を選びました。
そこで作ったのが「おこづかいは超えていい」というルールです。
生活費(住居・食費・光熱費・日用品・保険など)は片方の給料に収まるように組む。でもおこづかいだけは、その枠の外に置いて超えてよしとする。この形にした瞬間、無理なく続けられるようになりました。
数字で見るとこういうこと
言葉だけでは分かりにくいので、具体例で見てみましょう。夫の手取り25万円・妻の手取り20万円(世帯45万円)のケースです。
| 項目 | 金額 | |
|---|---|---|
| 住居費 | 9.0万円 | この部分が 夫の手取り25万円に 収まっていればOK |
| 食費 | 6.0万円 | |
| 水道光熱・通信 | 2.5万円 | |
| 日用品・雑費 | 1.5万円 | |
| 保険・その他 | 2.0万円 | |
| 貯蓄(先取り) | 3.0万円 | |
| 小計(暮らしの骨組み) | 24.0万円 | ✅ 25万円に収まった |
| おこづかい(夫3万・妻3万) | 6.0万円 | ⬅ ここは枠の外。超えてOK |
| 支出合計 | 30.0万円 | 残り15万円は貯蓄へ |
※ 数字はイメージです。世帯収入45万円に対して支出30万円なので、月15万円が貯蓄に回る計算になります。
ポイントは、「暮らしの骨組み」と「おこづかい」を分けて考えていることです。骨組みだけなら24万円で、夫の手取りに収まっています。つまりこの家計は「片方の給料で暮らせる形」ができている、と考えます。
この形が、産休のときに本当に役に立ちました
私が2回の産休・育休を経験したとき、この設計に助けられました。収入が減る時期に入ったら、おこづかいを削るだけで、生活が片方の給料の中に収まったのです。
具体的には、夫のおこづかいは少し減額してもらい、私はほぼゼロにしました。といっても苦しくはありませんでした。産休中は家から出る機会も少なく、必要なものは家計の中でやりくりできたからです。
あらかじめ「いざとなったらここを削る」という場所を決めてあったので、収入が減っても家計を作り直す必要がありませんでした。おこづかいは、贅沢のためだけでなく、いざというときの緩衝材でもある——そう考えると、おこづかいを持つこと自体が家計の設計になります。
共働きでふたりとも頑張っているのに、贅沢は一切ダメ——そんなふうに考える必要はまったくありません。無理して「絶対に片方の給料を超えないように」とすると、たいてい途中で苦しくなってやめてしまいます。それでは意味がないんです。
大事なのは、超えないことではありません。超えた分は「超えている」と分かっていることです。自分で選んで超えているなら、それは問題ではありません。知らないうちに超えていることだけが問題なんです。
やり方は3ステップだけ
- おこづかい以外の生活費を合計する
住居費・食費・水道光熱・通信・日用品・保険・先取り貯蓄。これが「暮らしの骨組み」です。まだ家計を把握できていない方は、家計簿のつけ方ガイドから始めてください。 - 収入が高いほうの手取りと比べる
収まっていれば合格。オーバーしていたら、その差額が「これから調整していく余地」です。金額が分かるだけで十分な前進なので、落ち込まなくて大丈夫です。 - おこづかいは枠の外に置く
そのうえで「いざというときはここを削る」と決めておきます。夫婦で共有しておくのが大事です。いきなり削ると揉めますが、先に決めてあれば納得して減らせます。
収まらないときは、どこから見直す?
骨組みがオーバーしている場合、削る順番があります。効果が大きくて、生活の満足度を下げない順です。
- 通信費・サブスク——一度見直せばずっと効果が続きます。我慢がいらない削減の代表です
- 保険——内容を把握しないまま入り続けているものがないか確認します
- 住居費——ここが最大の分かれ目です(下記)
- 食費・日用品——最後で構いません。毎日の努力が必要な割に、削れる額は限られます
住居費は家計で最も大きく、いちど決めると簡単には変えられません。ふたり分の収入を前提にローンを組むと、どちらかが働けなくなった瞬間に家計が行き詰まります。できれば「片方の収入で返せる額」でローンを組むのが、いちばん確実な安心の買い方です。私は2012年にマイホームを買いましたが、余裕をもった返済計画にしたおかげで、その後の産休・育休期間も不安なく過ごせました。
この設計が手に入れてくれるもの
片方の給料で暮らせる形ができると、変わるのは貯蓄額だけではありません。
- もう一人分がまるごと貯蓄に回る——努力ではなく構造で貯まるようになります
- 収入が減っても慌てない——産休・育休・転職・病気。何が起きても家計を作り直さずに済みます
- 選択肢が増える——育休を長めに取る、転職する、働き方を変える。「お金が理由でできない」がなくなります
最後のものが、いちばん大きいと思っています。これはお金の話に見えて、実は人生の選択肢の話です。
まとめ
- ふたりの収入があるうちに片方の給料で生活が回る形を作っておく
- 収まらなくても大丈夫。おこづかいは枠の外に置いて、超えてよしとする
- そのかわり「いざとなったらここを削る」と先に決めておく
- 節約はしても、我慢はしない。続かなければ意味がありません
- 大事なのは超えないことではなく、超えていると分かっていること
まずは、おこづかい以外の生活費を合計して、収入が高いほうの手取りと比べてみるところから。それだけで、これから何をすればいいかが見えてきます。